いるみねいしょん

冬の寒さが厳しくなると同時に街はイルミネイションで色づく
買い物の帰りにせっかくだからと二人で見て歩く事になった


「うわー!きれー!!」


携帯片手に写メを撮ってはまた歩き出す


「うわーこれすごい!ハートだ!!」


カメラモードの携帯をかざしたまま近づいて行く
電子音でのシャッター音がして満足げに画面を見ていると


『どれ?』


後ろから覗き込んできた


「んー写メで撮るとイマイチ…」


見た目はあんなにもキレイなのに携帯におさまると光が半減してしまう


『それが現実だよ。目で見てるのは光が膨張して見えるようになってるから写真に写すと本来の光が写るんだよ』


なんだかちょっと切ない
だって確かに自分の目に映ってるのはキラキラした世界なのに本当はそうじゃないだなんて…
なんか、それって、まるで…


今日は比較的暖かい夜で
だけどやっぱり冬だから指先が冷たくなってくる
人波に飲み込まれないように近づいて歩いてる私たち
さっきから何度も手がぶつかってるのに繋がれる事はない
傍から見たら私たちはカップルに見えてるんだろうけど
本当はただの友達で…
さっきの説明がぐるぐる頭の中を回って胸がぎゅってなった


「手が寒いーーーー」

『でも今日はまだ暖かい方だよ』

「だって今日ポッケないんだもん…」

『ポケット貸してあげよっか?』


そう言って左側のポケットから手を出して私の右手を入れてくれた


「あったかーい」

『それはよかった』


本当はわかってたんだ
彼は優しいからポケットを貸してくれるだろうって
だけど予想外だったのは
ポケットから出た彼の手が再びポケットに帰ってはこなかったこと
手を繋げばもっと暖かくなれるのに…
そっか、それはイルミネーションと一緒で
今はキラキラしてきれいだけど現実は違うってことか…
どんなに至近距離にいても
どんなに顔が近付いたとしても
何も起こらないのは、そういうことだよね





もう春ですよね…
ってことで新しいの書いてたのに入れ替えてなかったのに今頃気づいたので
こっそり入れ替えましたとさっ


もしもこれが好きな人とだったらどうなってたかな?って妄想で作ったんですが
そんな事もあったなぁってちょっと懐かしいです
数か月前の話なのにねぇ