大好き

『やーっと終わった!』


最後の1部をポンッと机に置いて背伸びをしている
そんなヤツを視界に入れながらも散らかった冊子を1か所にまとめる


授業態度が悪いと放課後担任につかまり
≪罰として、放課後俺んとこくるように≫
そう言われたけど忘れたふりして帰ろうとしてるとこを捕まってしまった
≪このプリント、まとめて留めといて!≫
軽い口調で言われたけどプリントは山のようにあって
それをまとめるのは一苦労でして…


そもそも授業中にコイツが話しかけさえしなきゃ、こんな事にならなかったのに!


目線をヤツに戻せば椅子から離れ窓から外をのぞいていた



「これ数えなきゃ帰れないんですけど?」


『お前が数えたらえぇやん』



この量をですか?
結構な量あるんですけどね?
だってほら!もう外がオレンジ色に変わるくらいの時間を費やす量だよ?



ヤツの背中を見てもこちらに戻る気配はなく



…もういい!私は早く帰りたいんだ!見たいテレビが待ってる!!



「いーち、にー、さーん、しー、ごー」



1部ずつ数える



「じゅーいち、じゅーに、じゅーさん、じゅーし」
『にーじゅいち、にーじゅに、にーじゅさん』



さっきまで窓際にいたくせに何故か近くで違う数字を言ってくる
紛らわしいからやめてくれ!



「じゅーし、じゅーご、じゅーろく、じゅーしち、じゅーはち」
『じゅーいち、じゅーに、じゅーさん、じゅーし、じゅーご』
「じゅーろく、じゅー…あぁ!!!!!!もう!!!!」



案の定つられてしまい、また数えなきゃいけなくなった
早く帰りたいのに!



今度は声に出さずに、心の中で数えてみる



(いーち、にー、さーん、しー)



手元に集中



(さーんじゅ、さーんじゅいーち、さーんじゅに)
『にーじゅはち、にーじゅきゅ、さーんじゅ』
(さーんじゅいち、さーんじゅに・・・・あ!!!)
「もう!また間違えたじゃん!もうちょっとだったのに!!」


ムキになって言えば意地悪に笑う
その顔が悔しいくらいカッコよくて


「もう嫌い!!」


言いながら肩を軽く叩いた


直後[嫌い]って言ったのは自分なのに
傷ついた顔をしていたのは自分だった
ヤツは表情一つ変えず私の視界にいた


数えながらさっきの自分の声が耳に残ってる
数が大きくなるほど胸が苦しくなっていって罪が重くなってく気がした


「終わった!」
『やっと帰れる』


職員室を後にして靴箱に向かう途中
さっきの痛みに耐えれなくなった


「さっきさー」
『あ?』
「嫌いって言ったけどあれは言葉のアヤでして」
『は?』
「いや、だからさっき数えてる時に言ったじゃん?」
『誰が?』
「私が」
『なんて?』


その言葉を再び口にしないといけませんか?


「だーかーらー…」


見上げれば「なにを?」って顔で次の言葉を待ってるらしい


「…嫌いって」
『聞いてへんよ』
「え゛!!そうなの?」


なんだ、だったら言わなきゃよかったよ
いま思いっきり目を見て言っちゃったじゃん
墓穴掘るってこういうこというんだね…


『そーゆーの聞こえへん耳になってるし』
「そりゃ便利な機能ですね」


あーもーそのまま流せばよかった
さっきまでの罪に苛まれてた自分なんだったんだろ


『それにお前は俺の事好きやし』
「どっからくるの?その自信」
『この顔?』


言い終わってまたニヤリと笑うから
ドキリと胸が高鳴った

悔しい!悔しいけど間違ってない!!


『当たってるやろ?』


ニヤニヤしながら聞くから


「さーそれはどうだろ?」


せめてもの抵抗をしてみた…つもりだった


『なんや、つまらん』


そう言ってヤツは嬉しそうに手を繋いできた
なんだ、ばれてたんだ












出来ればこういう甘酸っぱい思いでが欲しかった!みたいなね(笑)