家出

ようやく日が落ちて辺りが暗くなった
彼は振り向きもせず、ただひたすら私の手を引いて人ごみの中走る
その背中を目印に遅れないよう走るのが精一杯
ぎゅっと握られてる手首が痛い
だけど今はそんな事どうでもいい
早く逃げよう
誰もいない世界に早く・・・



行き先も決めないで飛び乗った電車は思ったより人が少なくてホッとした
二人並んで座って呼吸を整える
会話はない
だけど今はそんな事どうでもいい
早く逃げよう
誰もいない世界に早く・・・


私の手首にあった温もりが離れ急に不安になった

「赤なってしもたな」

苦しそうに笑いながら、赤くなった手首に指を滑らす
ふわりと消えそうな気がして、急いで彼の手を握った
繋いだ手を見て少し寂しそうに笑った

そんな寂しい顔しないで?
誰もいない世界に行けばきっと
前みたいに楽しく過ごせるから。
だから早く逃げよう
誰もいない世界に早く・・・

 

知らない駅で降りてあてもなく歩く
街灯もなく民家も疎ら
求めてた誰もいない世界に着いたのに
急に怖くなった

「大丈夫や」

繋いだ手から不安が伝わってしまったんだね
そして励ますように私の好きな歌を歌いだした
目を閉じるとその歌声に吸い込まれる
手を引いてくれる彼
歌っているのも彼
私の全てを包み込んでくれてるみたいで安心した

防波堤に座って彼はたくさん歌ってくれた
中合わせで座ってるから振動も伝わってくる
ほら、体がドクドクいってるのも伝わってくるんだよ?

 

 


もうどのくらい歌ってたのだろう?
気づけば辺りは明るくなり始めて

「帰るか」

そう言って手を差し伸べてくれた

彼は最初からわかってたんだ
誰もいない世界なんてない事を
何処に逃げても楽にはならない事を


家に帰れば両親が玄関先で待っていて
物凄い勢いで怒鳴られ家に入れられ
玄関のドアが閉まる瞬間、彼が頭を下げてるのが見えた

 

 

もうあれから何年経ったんだろう?
それ以来彼とは会わせてもらえず自然消滅してしまったけど
今でも不意に思い出してしまいます

幸せに暮らしてますか?
贅沢を言ってしまえば、あなたの幸せに私が加わりたいけど
それ以上にあなたが幸せに暮らせているのならそれで満足

あなたは私の初恋でした

 

 

 

 

 

 

 

切ねぇー!

勢いで書いた割には気に入ってます(毎度自己満足)

追い込まれてる時に思いついたんですけど

追い込まれてるのに妄想が出来てる自分って(ノ∀`)

一応夏設定です

そりゃそうよね、今の時期夜中寒いもんね!

うん。逃げたい時もあるよね!

でも何処に行っても自分は自分なんだよねって気付いて出来上がったお話です

色んなことがあって『今どん底』とか思うことが多々あるんですけど

それでも明日は来るのです

一緒に頑張ろうね♪